2024/02/02
不動産会社に必要なマーケティング方法とは?戦略や事例を紹介
人口減少、少子化によって不動産会社の抱える課題が深刻化しています。人手不足の慢性化により、日々の事務処理やクレーム対応に追われる中、見込み顧客の獲得まで回らないということも少なくないのではないでしょうか。
こうした中、時代に合わせたマーケティング戦略が求められています。
この記事では、不動産業界の現状に照らし合わせて効果的な不動産会社のマーケティング方法とその戦略、事例を紹介します。
不動産会社が直面している営業課題3つ
人口減少、少子高齢化は、日本の経済に大きく影響しており、不動産会社もその例外ではありません。多くの不動産会社で、次のような営業課題に直面しているのではないでしょうか。
人口減少により売上が安定しない・上がらない
人口減少の影響はそのまま契約件数の伸び悩みにつながります。
そんな状況でもどうやって売上を伸ばせるか、多くの不動産会社が頭を抱えていることでしょう。
内閣府の「令和5年版高齢社会白書」によると、日本の総人口は、2022年10月1日現在、1億2,495万人となっており、高齢化率は29.0%と世界で最も高くなっています。
令和5年4月に国立社会保障・人口問題研究所が公表した「日本の将来推計人口」における出生中位・死亡中位仮定による推計結果では、長期の減少過程に入っている状況です。
2031年には人口1億2,000万人を下回り、2056年には1億人を割って9,965万人となると推計されています。
今後も人口減少は避けられない状況となっており、人口減少・少子高齢化の社会でも生き延びられるような経営が求められています。
見込み客が増えない
この人口減少により、見込み顧客を増やすことが難しい現状もあります。
2020年に行われた売主における不動産売却についての意識調査によると、中小不動産会社で最も多い営業課題は「見込み管理・追客営業」となっています。
見込み顧客を増やすことが難しい中、いかにリピーターとなってもらえるかが課題になっており、口コミにより顧客を増やしてもらえるかは売上にも大きくかかわってきます。
しかし、不動産会社は事業上、クレームが発生しやすいことも事実としてあります。
不動産は購入や賃貸契約にあたって高額の費用がかかり、人の生活に大きくかかわってくるため、契約成立後に問題が発生するとクレームに発展しやすい傾向があります。
契約後のトラブルに関して法律上の免責事項を伝えていても納得してもらえることがない場合もあります。
こうしたクレーム対応に追われるばかりでホームページやSNSの運用にまで手が回らないということも多いのではないでしょうか。
ホームページ・SNSを開設しても問い合わせがこない・売上につながらない
もし、ホームページやSNSを開設したとしても、戦略的に運用できず、問い合わせがこない・売上につながらないままで、効果を実感できていないというケースは非常に多いでしょう。
効果的な運用をするには、一定程度の時間・コストが必要ですが、慢性的な人手不足・業務の多忙化によりそこまで手が回らないという会社も多いのではないでしょうか。
営業課題を解決する3つの方法
こうした営業課題を解決する方法として、次の3点が挙げられます。
顧客ニーズを把握するためのマーケティング
不動産会社の営業活動を効果的に行っていくうえで、顧客ニーズを把握するためのマーケティング活動は欠かせない重要なものです。
ただ、慢性的な人手不足の状況で、顧客ニーズを調査・分析することは難しいかもしれません。その一部をコンサルティング会社に外注することで調査・分析の結果を把握することは可能です。
営業スキル向上のための研修や教育
営業スキル向上のための研修や教育もまた、非常に重要です。
営業のスキルが社内で共有されず、各人の個人プレーとなって属人化してしまうと、会社全体で方向性が合わず営業効率が低下することや担当者間で成約率に差が生じてしまうことにつながってしまいます。
社員への研修や教育を提供し、営業スキルを共有することで営業活動の方向性を合わせることができ、チーム・会社全体で営業目標を達成することができるようになるでしょう。
業務効率化のためのシステム導入
営業活動を効果的に進めるうえでも、業務効率化を図るためのシステム導入は重要です。
具体的には、顧客管理ができるMAツールがおすすめです。詳しくは後述します。
不動産会社に必要なマーケティングとは?
不動産会社の営業課題を解決していくためにも戦略的なマーケティング手法の導入が必要となってきます。
ただ、不動産会社とひとえに言っても、その業種は不動産開発(デベロッパー)と不動産流通(仲介)、不動産管理、不動産賃貸の4つに分けられます。
ここでは、デベロッパーを除いて、主に一般消費者を対象とした不動産流通や不動産賃貸を扱う業者向けに解説していきます。
不動産のマーケティングとは?
マーケティングとは「商品やサービスが売れる仕組みをつくること」です。
不動産会社のマーケティングというと、新築分譲マンションのチラシやフリーペーパーの賃貸情報を想像する人もいるかもしれません。しかし、今効果の高いマーケティング活動は、Web上で興味の高い層に向けたものに最適化されています。
従来の手法と今、必要な手法について、順に解説します。
マーケティングと集客の違い
前提として、マーケティングと集客の違いについて触れておきます。
マーケティングと併せて使われることの多い言葉として、集客がありますが、集客とは「見込み顧客(リード)を獲得するための活動全般」を指します。
マーケティングでは必ずしも顧客を集めることにこだわらず、売上を伸ばすことを指し、物件の成約につなげるための重要なプロセスを改善することを目指します。
従来のマーケティング手法と問題点
従来、不動産業界では次の4つの手法が取られてきました。
- ポスティング
- 新聞折り込みチラシ
- 雑誌の掲載
- DM
現在もこの手法は使われています。
しかし、これらの手法のみで時代の変化に合わせて変えていかなければ不動産会社は生き残れなくなってしまうのが現状でしょう。
顧客のライフスタイルは変化し、情報を得るメディアが新聞や雑誌などの紙媒体から、スマートフォンやモバイル、PCなどのインターネット・Webが主体となっています。
また、スマートフォンの普及によっていつでもインターネットに繋がるようになりました。
顧客は来店しなくてもインターネット上で不動産にかかわるさまざまな情報を調べることで、購入につながるさまざまな情報を得るようになっています。
不動産会社に限らず、多くのビジネスではWebマーケティングを展開し、そこから得られたデータをもとにさまざまな戦略を練りながら効果のある施策を実施しています。
今、必要なマーケティングとは
今、求められているマーケティングの手法は、顧客のライフスタイルに合わせてインターネットを活用していく必要があります。
具体的には、次の3点を意識しましょう。
- 自社の発信する情報をデジタルメディアで発信して顧客がいつでも見られるようにする
- 追客から成約までをオンラインで完結できるようにする
- 顧客に求められているものを発信し、問合せにもすぐに返せる仕組みをつくる
こうした仕組みをつくるためにも、GoogleやYahoo!などの検索エンジンやSNSなどを通じて顧客と接点を持てるようになること、認知してもらう仕掛けをオンライン上に作っておくことが重要です。
インターネットを活用すれば、顧客が来店する手間も接客対応のコストも省くことができるようになります。
不動産会社に必要なWebマーケティング方法
では、不動産会社に必要なWebマーケティング手法として具体的には、次の5つがあります。
順に解説します。
戦略的なホームページ・ブログコンテンツ
ホームページを作れば良いという時代は終わり、戦略的なホームページ・ブログコンテンツが求められています。
具体的には、ホームページ開設後も次の施策・見直しが必要となります。
- SEO対策
- ホームページ内の問合せの導線をスムーズにする
- 顧客の知りたいことがホームページに載っている
SEO対策とは、Googleなどの検索エンジンで何らかのキーワードを入れて検索したときに、上位表示されるための取り組みです。
キーワードは、顧客ユーザーが検索しやすい言葉を選びます。たとえば「賃貸 心斎橋(地名)」と検索して自社の不動産情報が上位表示されるというようなことです。
どんなに素敵な情報を掲載しても、ホームページに来てもらわなければ意味がありません。
不動産や賃貸などの物件を探すときに検索エンジンを使うユーザーは多く、SEO対策をして自社のホームページに来てもらう、自社を知ってもらう仕掛けをしておきましょう。
ホームページの流入を増やすためにSEO対策は必須ですが、SEO対策と併せて行っておきたいのが、ポータルサイトの掲載やSNSとの連携です。
ポータルサイトとは、SUUMOやホームズ 、at homeといったユーザーが物件を探すときに活用するWebページです。
これらのサイトはすでに集客力が高いため、SEO対策をしなくても一定の流入が見込めます。
ポータルサイトは地域のエリア・特性によって効果が高まるものを利用するのが良いでしょう。ただし、掲載には有料となるのでコストパフォーマンスを考えた上で、利用するサイトを選ぶことをおすすめします。
効果的なSNSの運用
SNSユーザーが増える中、不動産の顧客となる人たちに必要な情報が得られるSNS運用は非常に重要となっています。
各SNSの特色は次のようになっています。
- Instagram:写真で魅力を伝えることができる
- YouTube:不動産の情報を動画で伝えられるため、情報の解像度が最も高い。検討を要する顧客に有効
- X(旧Twitter):気軽につぶやけるため、情報発信のハードルが低い。若い世代への賃貸情報発信に有効
- Facebook:地域顧客・年配世代に有効
不動産の情報発信として、InstagramやYouTubeが効果的です。顧客の世代やユーザーが多い場合に、Xも併せて活用するといいでしょう。
運用型広告(Web広告)
運用型広告とは、主にWeb広告のことを指します。
広告主が目的や成果に応じて、ターゲットや予算、広告クリエイティブなどを変更・調整できる広告出稿の方法です。
これまでホームページやSNSの運用方法をお伝えしましたが、長期的な対策が必要となるため、Web広告も併せて活用することをおすすめします。
運用型広告には次の6つがあります。
- リスティング広告
- SNS広告
- ディスプレイ広告
- 動画広告
- DSP広告
- リターゲティング広告
このうち、代表的なWeb広告としては、リスティング広告やSNS広告、ディスプレイ広告がよく知られています。
リスティング広告は、Googleなどの検索エンジンに掲載される広告です。
ユーザーが検索したキーワードに連動して広告が表示される仕組みで、商材に対するニーズを持つターゲットにアプローチしやすいため、購入意欲が高い客を自社サイトに誘導する目的で活用されることが多くなっています。
SNS広告とは、FacebookやInstagram、X(旧Twitter)などのSNSのプラットフォーム上で配信される広告です。
特徴としては、SNSの持つ高い拡散性を期待できること、ユーザーのオンライン上での行動に基づいて高い精度でターゲティングを行えるという点です。
SNS運用をしているなら、SNS広告も併せて活用するとより効果的と言えるでしょう。
ディスプレイ広告とは、Webサイトの広告枠に動的に表示される広告です。
広告の内容に関連のあるWebサイトに広告が表示されるため、購入意欲が高まっていないものの、興味があるユーザーにアプローチできます。
潜在顧客に広く知ってもらうときにおすすめの広告です。
「工務店がWeb広告で集客する方法!コンバージョンを獲得して売り上げアップを目指そう」
メルマガ・LINE
メルマガ・LINEは、新しい情報や商品・サービスのお知らせなど、鮮度の高い情報をよりスピード感を持って伝えることができます。
平均的なメルマガの開封率は約11%、LINE公式アカウントの開封率は約65%となっており、LINE公式アカウントの方が開封率が高い傾向にあります。
これは、LINE公式アカウントはユーザーが自ら友だち追加することで、興味や関心のある情報を受け取ることができるためと考えられます。
メルマガのメリットは、多くの情報を一度に伝えることができることです。一方、デメリットは、開封率が低く、迷惑メールと判断される可能性もあることです。
LINE公式アカウントのメリットは、開封率が高いことや、ユーザーとのコミュニケーションを活発にできることです。一方、デメリットは、メッセージの文字数が制限される場合があることです。
多くの情報を伝えたいときはメルマガを使い、画像やビデオメッセージといった視覚的に訴求したいケースではLINE公式アカウントを使うといいです。
また、業種やターゲット層によっても、適切な使い分けは異なります。自社の目的やターゲット層に合わせて、メルマガとLINE公式アカウントを効果的に活用することが重要です。
MA(マーケティングオートメーション)ツールを活用した顧客管理
MA(マーケティング・オートメーション)とは、マーケティングを仕組化することです。仕組化していくためのツールを活用していくことが重要となっています。
たとえば、MAツールではメルマガの配信を顧客の興味や関心に合わせて、効率的かつ効果的に行うことができます。
これは「スコアリング」というもので、すでにリストにある見込み顧客のなかから、提案や営業を受け入れやすいと考えられる人を絞り込む機能が付いているからです。
このほか、顧客からの問合せや質問用のフォームを簡単に作成できたり、キャンペーンサイトを作成するときに活用できたりします。
不動産会社がマーケティングを成功させるポイント
不動産会社がマーケティングを成功させるポイントは次の2つです。
ブランディングを高めること
Web上で情報発信を積極的に行っていても、ブランディングが高まっていないと逆効果になってしまいます。
ブランディングとは、自社の商品・サービスの価値、企業イメージを高めるための活動です。
マーケティングとの違いは、マーケティングが売れるための仕組みづくりであるのに対し、ブランディングは企業や商品の価値向上であって、必ずしも売れることだけを目指すわけではありません。
もし、オンライン上で企業や商品のネガティブなイメージが付いてしまうと、リアルな世界よりも広く、速く拡散されてしまいます。
具体的には、検索窓にネガティブな言葉が自社の商品名・企業名とともに検索候補として表示される「サジェスト汚染」やSNSでの炎上などです。
こうしたことが起きてしまうと、その対策に追われてしまいます。
ユーザーが自社を知ったとき、より良いイメージを持ってもらえるよう、日頃からオンライン上でのブランディング活動が重要です。
もし、ネガティブなイメージが拡散されてしまったとしても、根強いファンや高い信頼性が担保されていれば、影響はより小さくなります。
SEO対策やSNS運用などでの商品・サービスのPRはもちろん重要なことですが、社会貢献活動やコンプライアンスの遵守などについても日頃から発信していくことで、ファンの獲得にもつながります。
「不動産会社におけるブランディングの重要性!ブランドを高めるための3つのポイント」
DXを活用し、来店なしでも集客を増やす
ホームページやSNSで情報発信する際にVRを利用した物件の内覧ができると、ユーザーは実際に現地へ足を運ばなくても物件の吟味ができます。
ユーザーにとっては購入の検討材料が増えて無駄足を省くことができ、不動産会社にとっては現地に足を運んだけど取りやめるユーザーを可能な限り少なくすることができます。
AIを活用した物件査定やオンライン接客、オンライン内覧などもおすすめです。
不動産会社がすぐにできるマーケティングDX活用事例
ただ、ブランディングは長期的な視点が必要であり、DXはすぐには導入できないこともあるでしょう。
不動産会社がすぐに活用できる次の2つの事例をご紹介します。
Instagramのルームツアーで見込み客を増やす
賃貸などの物件情報を動画に収めた「ルームツアー動画」は物件情報を知ってもらうコンテンツとして非常に有効です。
今多くの不動産会社で、このようなルームツアー動画を挙げることで反響を呼んでいます。
Instagramのユーザーでは、今すぐにでも物件を探しているという人もいれば、いずれはという潜在顧客も同時に見ていることがあります。
ルームツアー動画では、内容によってはバズることもありますが、もしバズらなくても本当に物件を探している顧客層にとっては非常に重要なコンテンツです。
弊社がホームページ制作やSNS運用で携わらせていただいている株式会社尾崎工務店様では、リフォームや新築の依頼に際して、「インスタを見てきました」という声を多くいただいていおり、ルームツアー動画をはじめとしたコンテンツを見ていたことが伺えます。
ルームツアー動画を投稿しておくことで、ユーザーはその物件を購入しなくても不動産会社の扱う物件の特色を知ることができるため、投稿された物件に似たものへの問合せをすることもあるでしょう。
類似物件への興味を寄せてもらうきっかけになってもらうなどして、見込み顧客の獲得に効果的と言えます。
HPのリニューアルをすることで問い合わせが5倍以上に
弊社でホームページのリニューアルとコンサルをさせていただいた株式会社日本物産様は、月3件程度だったホームページからの問合せはリニューアル後、15件を上回り、5倍以上になりました。
株式会社日本物産様では、神奈川県相模原・町田のエリアを中心に不動産事業を主体として、土地情報の発信から新築注文住宅・分譲住宅・規格住宅を手掛けています。
イベント情報の投稿やInstagramの運用など定期的に携わらせていただいておりますが、新しいホームページに対するスタッフの評判も良く、セールストークにも変化を感じているようです。
会社の魅力・特色をよりホームページに打ち出したことで、社内の意識共有ができ、営業活動もよりスムーズになっていることを実感されています。
弊社では、コンサルティングも行っているため、営業活動の相談についても対応しており、気軽にお悩みや課題を共有いただけたらと思います。
不動産会社が集客力を高めて売上を伸ばすためのセミナー情報
とはいえ、いきなり集客を増やそう、売上を伸ばそうと意気込んでも何からやればいいかわからないという方も多いのではないでしょうか。
これまでホームページやSNS、Web広告などWebマーケティングの方法をお伝えしてきましたが、これらをすべてやることは非常に難しいですし、何を優先事項にやっていくといいのかも判断がつかないことでしょう。
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セミナー参加者の特典として、コンテンツ無料診断なども行っているため、非常に有益な内容です。
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まとめ・不動産会社に必要なマーケティング施策を進めましょう
本記事では、不動産会社に必要なマーケティング施策や戦略、事例を紹介してきました。
人口減少・少子高齢化が進む中、不動産会社は苦境に立たされている現状があります。しかし、だからこそ他社と差別化し、最適なユーザーに特色を打ち出すことができれば、より多くのファンが根付き、顧客の定着と見込み顧客を増やしていくことができるでしょう。
不動産会社がWebマーケティングに取り組むことで得られる伸びしろはまだまだ十分にあります。しかし、リソースが限られる中、マーケティングに取り組んでも投資対効果を感じていない企業も多いのではないでしょうか。
SNSを運用しても効果が出ない、ブログ記事を書いていてもSEO対策が弱いなど課題を抱えている企業はぜひ、ご相談ください。